「OSSライセンスの教科書」という本を読んでいます。

- 作者: 上田理,岩井久美子
- 出版社/メーカー: 技術評論社
- 発売日: 2018/08/23
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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普段の業務上でもお世話にならないことが無い、OSS(オープンソースソフトウェア)な訳ですが、 そのOSSのライセンスについて理解を深めるのにとても良い本だと思います。
以下は「OSSライセンスの教科書」の中の頒布に関する内容の一部メモです。
頒布
OSSのライセンスについて調べたりしていると頒布(はんぷ)という言葉が付きまといます。
頒布をネットで調べると以下のような感じの定義が出てきます
不特定多数の相手に広く配る行為のこと、有償無償は問わない。
OSSを適切に扱う(OSSのライセンスの内容に適合させる)ためには、頒布が大事なタイミングとなります。
OSSライセンスでは、OSSを頒布する側に条件を課していることが良くあるためです。
(ライセンスによっては、利用許諾されたソフトウェアを頒布する際に、頒布する人がソースコードを開示する ことなどを求めています)
「頒布する人」とは、OSSの開発者だけを指すわけではなく、そのOSSを入手し、誰か他の人に渡す人(法人含む)は全て頒布する人になります。
頒布する形態も色々とあり、ソースコードを誰かに渡すこと、バイナリコードを渡すこと、OSSを製品に組み込んで渡すのも頒布になります。
頒布の事例
「OSSライセンスの教科書」では、各種事例を取り上げ、それが頒布にあたるのかどうかを紹介してくれています。
以下はその内容の簡単なメモになります。
■ソフトウェアの内製
あなたは消費者用機器の開発メーカーでソフトウェア開発を行なっている。
あなたの開発したソフトウェアにOSSが含まれている。
そのソフトウェアを組み込んだ製品が発売された。この場合、あなたの会社はOSSを頒布すると言えるか?
→ 頒布していると言える
機器に組み込まれているからといって、バイナリ形式になっているからといって頒布では無いと主張するのは無理がある。
■開発製造受託会社に開発を委託
あなたは消費者用機器の開発メーカーに在籍している。
開発製造受託業者に委託して製品を開発してもらい受給した。
製品が発売されたが、この製品にはソフトウェアが組み込まれていて、開発元のベンダーによるとその中にはOSSが入っているとのこと。
あなたの会社はOSSを頒布していると言えるか?
→ 頒布していると言える
開発元のベンダーがあなたの会社にOSSを頒布したが、製品とともにユーザにOSSを頒布しているのはあなたの会社です。
そのため、頒布に伴う条件を履行する必要があります。
■マーケティング部門がモバイルアプリを作成
あなたはインターネット通販企業のマーケティング部門に属しています。
外部のソフトウェアハウスに頼んで、スマートフォンアプリを開発し、拡販を開始しました。
ソフトウェアハウスの担当者は「そのアプリには実はOSSを使っているんです」と話していました。
あなたの会社がOSSを頒布したと言えるか?
→ 頒布していると言える
あなたの会社はスマートフォンアプリに組み込まれているOSSを頒布しています。
頒布する人(法人)としてOSSライセンスが求めていることを確実に実施する必要があります。
■Webサーバ構築
あなたは Linux と Apache を使ってWebサーバを構築しました。
そのサーバ上であるWebアプリケーションを構築して運用しています。
あなたはOSSを頒布したているでしょうか?
Webブラウザなどで、このシステムにアクセスするユーザは、このサーバに対してデータを受け渡して、
サーバで処理された結果を受け取ります。
その際に、LinuxやApacheといったOSSプログラムそのものをユーザに渡されることはありません。
この観点では、
→ 頒布していると言えない
ということになります。
しかし、Webサイトからユーザ側(ユーザの端末)で実行されるプログラムがサーバからユーザに渡されることもあります。
例えば、JavaScriptがそれに該当します。
もしも、そのJavaScriptのプログラムがOSSであった場合、
→ 頒布していると言える
となります。
一筋縄ではいかない例となります。
■知らぬ間にOSSが製品に入っていた
あなたはソフトェアが含まれる製品を出荷しています。
ある時、全く面識のない人から連絡を受け、あなたの製品の中にOSSが含まれているのではないか
という問い合わせを受けました。
改めて調べてみると、その製品の中にOSSが含まれていることがわかりました。
あなたはOSSを頒布したと言えるか?
→ 頒布していると言える
たとえ、あなたがOSSを頒布した意識がなくてもOSSライセンスが求めることを履行する必要があります。
まとめ
「OSSライセンスの教科書」の内容を元に、OSSの頒布につい簡単にまとめました。
OSSを扱う上で、頒布について一定の理解をしておく必要があります。
「OSSライセンスの教科書」は、OSSライセンスを理解する上で読んだ方が良いです。